2011年7月3日日曜日

必死のゲーム

『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』
287ページ以下
「神の足が去った場所でなんの試合が行われるか、キコはなんのために煙草を取っておくか、ハリウッドはどこにあるか、ミキマウスはどうやって答えることを学ぶか」

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ領土防衛軍対セルビア軍、休戦中の試合について。

背番号9、「ヘディングの鬼」のキコことダニル・キチッチ。
司令官ディノ・サフィロヴィチ、通称ディノ・ゾフ。GK。
「おれは永遠に“赤い星”チームのファンだ」というメホ。デヤン・サヴィチェヴィチが着ていた背番号10のレプリカユニを取り出す。
206センチの巨体FW、ミキマウスことミラン・ジェヴリチ。キコの同級生。
セルビアの司令塔、ガヴロ。デシャン・ガヴロヴィチ・ガヴロ。戦死した弟の復讐のために、二度目にクラリネットを捨てた、元一部リーグ選手。
凄惨な試合。
ついに死者が出る。
それでもしまいには、セルビア側の兵士たちは司令官に反旗を翻し、いわゆる伝説的な「死の試合」の様相を示す、のではなく、それとは違った結末を迎える。

“赤い星”ベオグラード。
アンダーレヒト。
ディポルティーヴォ。
少々違和感ありの表記もあるけれど、これはボスニア出身の青年作家によるドイツ語文学。
言うまでもなく、自伝的な小説。
デイヴィッド・ベズモーズギス『ナターシャ』など、ユーゴスラヴィア紛争を契機に難民・移民となった作家たちの作品(いずれも自伝的な話だ)は何冊か読んできたけれど。
ああ、なるほどね。この手があったか。

美しい村は美しく燃える。
主人公の作ったリストは不完全なままであろう。
美しい子ども時代は美しく、つまり残酷に断ち切られる。

『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』

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