2010年12月9日木曜日

ポーランド未だ滅びず?

私の認識では、ポーランドは映画大国なのだ。
少なくとも、日本のインテリたちにはポーランド映画は人気があるのだと認識している。
だからポーランド映画祭ともなると、ついつい行かなきゃという気分になる。

しかしこの時期にやるとは。
6本の作品のうち、観られるのは今日上映の「小さなモスクワ」《Malá Moskva》だけ。

何て言うかさあ…、惜しい作品だった。
おもしろそうな要素はふんだんに込められているのだけれど。
誰かもう少し才能のある人にリメイクしてもらったらよさそうだ。

いや、ビミョーな作品になってしまった一番の要因は、愛人役のポーランド男の魅力のなさに尽きるかもしれない。
なぜだろう?
ポーランドって、サッカー界を見る限り、決して醜男ばかりなわけではないのだが、というか結構ハンサム君もいるはずなのだが、映画界は恐ろしく不毛の土地なんだよなあ。
子役は可愛いし、おじさん・おじいさんになってくると魅力が出てくるのに、肝心のお年頃の男性がだめなんですね~。
(もしかするとポーランドだけじゃなくてチェコもだけど。)

ちょこっと検索したら、最初に見つけたのがセルビア語のサイト、次がチェコ語のサイトだったりするので、スラヴ圏ではそれなりに公開されたか、DVD販売がされたか、いずれにしろ各国で公の目には触れたらしい。
68年のポーランド、レグニツァというソ連軍の基地のある町での、ソ連軍人の妻(歌手??)とポーランド軍楽隊の青年とのメロドラマ。
台詞の9割はロシア語だ。
(恵比寿ガーデンプレイスのポーランド映画祭の掲示には、「ポーランド語、但し『小さなモスクワ』のみ一部ロシア語」と書いてあったが、一部ではなく殆どロシア語であった。)
ポーランド語はヴェーラの歌の場面と、もしかしたら教会の幼児洗礼の場面くらいだ。

そう言えば、誰が字幕を作ったの???
すごかった。
少し日本語のできるポーランド人なの?
ほんと、日本人とは思えない傑作ぶりだったな。
女性が平気で男言葉だし(見事に男女が逆転していて、大林監督の「転校生」的雰囲気が味わえる)、それでなくても会話が妙に固い言葉だし、尋問の場面でКГБらしき人がいきなり「~なの?」とか言い出すし、失笑続きだった。

チェコ語のサイトによれば、ジャンルは「ドラマ・歴史・ロマンス」とあり、まあそうなんですけどね…。
チェコの68年物には傑作が多いし、これももう少しでそうなったかもしれない、惜しいんだよな。

人妻に横恋慕する若い男が、傍目から見ると全く魅力なく、そんな輩に恋に陥る必然性が感じられないのに~という展開、『アンナ・カレーニナ』なんですよ。
それがラノヴォイ(←ソ連映画「アンナ・カレーニナ」でヴロンスキー役を演じた俳優です)みたく、外見だけでも「カッコいい~!」というなら、まだ許せるのだが(一応は納得できるのだが)、Lesław Żurekっていうこの俳優はただの垂れ目がちなあまり演技力もない人なので、ただの嫌な男にしか見えず、徹頭徹尾釈然としない思いのままだった。
案の定老け役も似合っていなかった。
カレーニン、もとい夫(ドミトリー・ウリヤーノフ)のユーラの方がいい男だったぞ、ずっと。
(サヤトはもっと好みだが。)
あと、КГБの人は「12」で陪審員役やっていたりもしたが、「フェアウェル」ではこういう役やっていたでしょ。

それと疑問だったのは、

*67-8年のポーランドが舞台の割には、女性、特にヒロインのヴェーラがお洒落すぎる。
歌手なのかもしれないが、髪が縦ロールでっせ!
全体にカトリーヌ・ドヌーヴ風。
一介のソ連軍人の妻で、どうして?というほど小ぎれいでシックであった。

*隣人のアルメニア人夫妻は、なぜ子どもにカトリックの洗礼を受けさせるのか?
そりゃ、ソ連当局でなくとも納得いかないでしょう!疑問でしょう!
死期が迫っているならともかく、緊急避難的な意味合い以外で、違うセクトの洗礼を受けようとは、思えないんだけどな。
やっぱりアルメニアに帰ってからアルメニア教会の洗礼を受けることを、親なら選ぶでしょ、いくらなんでもカトリックはないだろ、と思う。

*こんなにロシア語ばっかりの映画を作って、ポーランドでの反響はどうだったのだろう?
(ロシア語部分はポーランド語の字幕がついていたが、字幕を読むまでもなくわかる部分も多いのだろう)
と思う反面、ロシア男性からポーランド男性が女性を奪う話であり、しかも(アン・カレ同様)女性は罰せられるかのように命を失うのに、男性はのうのうと生き延びる、という点で、ポーランドはロシアに対して意趣返ししているのかもしれません。

あ、ネタバレごめんね。
一般公開するとは思えないんで。

でも、繰り返すけれど、もう少しですごくいい作品になったかも、というものです。
惜しい!!
たぶん、オブロンスキーっぽい人物を登場させたら、もっとすてきになると思われる。

「小さなモスクワ」《Malá Moskva》関連サイト(チェコ語)
ヴァルデマル・クシステク監督2008年

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