2011年7月28日木曜日

昔の記憶 本郷赤門前

一番古い記憶のうちの一つだと思われるのが、本郷の祖父母を訪ねたときに、階段から滑り落ちたこと。
祖父母が住んでいたのは泉館(または泉屋)という、木造3階建ての共同住宅の2階、6畳一間の部屋。
階段から落ちて痛かったのだろうが、残っているのは痛さの記憶ではなく、塗ってもらった薬の匂い。
膏薬だったのだろう。でも匂いはメンソレータムみたいだった。
そのあとどこかに出掛けた。
珍しいことにタクシーに乗った。
(当時我が家は貧しかったので、タクシーに乗るなんて滅多にないことだった。私が階段から落ちたことで「どこか」へ行くのに時間が押し迫ってしまったのだろうか?)
タクシーの中はタクシー独特の匂い、それにメンソレータムみたいな塗られた薬の匂い。
変な匂いが充満して不快!…という記憶なのだ。

この泉館は、明治時代に建てられた古ーい「下宿屋」で、階段は昇り降りの際、ぎしぎし音をたてていた。
祖父との思い出はこの泉館でのものが殆ど(これについてはそのうち書くことがあるかもしれない)。
もうとっくの昔に取り壊された、という話だ。
数年前、ロシアのレース編み展が本郷のギャラリーで行われた際に、泉館があったであろう辺りを母が観たいと願うので訪ねてみたが、すでに2代くらい入れ替わっているのではないかと思うほど、すっかり変わっていて痕跡すらない。

泉館のような雰囲気を湛えた建物と言ったら、かの有名な本郷館しか残っていないのだ。

が。
その本郷館も、とうとう「歴史に幕」だそうだ。

本郷館:東大近くの下宿、歴史に幕 築106年、来月1日解体へ

6月に最後の住人が退去、8月1日(4日後!)から解体作業が始まってしまう。
保存を求める署名運動が展開され、日本建築家協会の支部も要望を区に出して、区も文化財指定を考えていたのだが、所有者の意向を翻すことはできなかったということなのだ。

国立駅の旧駅舎もそうだったけれど、「えーーー、取り壊し??どうして?保存して欲しい!」と、大変残念な思いがするわけです。
維持するのはそりゃ大変だろうけれど、区に寄贈あるいは区が買い取り→保存という形にはできなかったのか。

私の高祖父(祖父の祖父)の生家は、文化財登録されて市が管理してくれている。
叔祖母の話だと、文化財の保存にわりと熱心な土地柄なのが幸いしたからで、もし合併の時に隣の市に入っていたなら文化財指定されることもなく取り壊されちゃったかも、とか。

泉館:文京区本郷6-13 東大赤門前にありました。
文京区はノリノリだったように、記事からは読めるが…お金を出す気はなかったのか?

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