2012年1月25日水曜日

旅立った…

ギリシャは、並の天才をまんべんなく世に送るのではなく、時にとんでもなく破格の“超天才”を生み出すところだ、と誰かが書いていた。
マリア・カラス、ニコス・カザンザキス、そして。

間違いなく、その、ギリシャが時にこの世に送り出す、とんでもなく破格の“超天才”であった、映画監督のアンゲロプロスが、この世を去ってしまった。
しかも、умер(亡くなった)ではなく、 погиб(非業の死を遂げた)。
アンゲロプロスを轢いたバイクの乗り手は非番の警察官だったという。
彼自身がそんな脚本でも用意していそうな最期だともいえそうな。

アンゲロプロスの作品で初めて観たのは「ユリシーズの瞳」。
パルムドールをクストリッツァの「アンダーグラウンド」にさらわれて、カンヌのグランプリに留まったのが、彼としては悔しくやりきれない思いだったようだ。
催眠映画の最右翼だという予備知識無しで臨み、はっきり言って眠りませんでしたよ。
アンゲロプロス入門にはいいかも。
テーマははっきりしているので。
(ただ、あの時代のバルカンが舞台なので、何ともやりきれない思いになるが。)

「エレニの旅」もよかった。
3部作になるというので、次作を楽しみしていたのに。

最も好きなのは「旅芸人の記録」。
私が幼かった頃の我が家の雰囲気を思い起こすことができ(“旅”芸人ではなかったが)、ひどくノスタルジーに駆られる。
ギリシャの現代史のことがそんなに判っているわけでもないのにもかかわらず、強烈に懐かしさを覚える。

キリエ・エレイソン

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