2012年6月30日土曜日

「ケルジする」という動詞

かつて背番号34番の暴走特急くんも非難の矢面に立たされていた(はずである)。
一部のゼニットファン(を名乗る人々)がゼニットの試合のみならず代表戦でまで彼を誹謗中傷する横断幕を掲げ試合の進行を妨害しようとしたのである。
このことでロシアはUEFAやFIFAから制裁を受けかねないような騒ぎだった。
ロシア代表の選手たちは「このような騒ぎを起こすなら、我々は対ドイツ戦の試合をボイコットする」という声明まで出した。
その試合はワールドカップ予選の最重要ともいえるものだったのだが、予選敗退のリスクを冒しても、選手たちはブィくんを守ろうとしたのだ。

このあたりの連帯は、米原万里の小説『オリガ・モリソヴナの反語法』で、オリガ先生を解雇させじと先生たちが自分がクビになるかも、と覚悟しながら行動するのに感動したことを思い出させた。
(オリガ先生は現地採用という弱い立場で、且つかなり口の悪い人間関係に難ありと思わせるキャラクターであったが、正式採用でエリートともいえる先生たちがその優位な立場を投げ打ってでも、と助け合いの精神を発揮してくれるのだ。)

無事試合は行われ、彼は彼で連中の妨害を黙らせるだけのプレイをし、問題は何となく立ち消えとなった。
(結局予選は別の理由で(プレーオフでスロヴェニアに負けた)敗退したんだけど。)
だけど、私はブィくんの姿を心に刻んだ。
辛かったと思う。
でもプレイで見返した。
マラジェッツ!
今回のユーロにも彼には出て欲しかった。

今回のロシア代表は、結局いつもの彼らであった。
驚くことはない。
ちょっとずつ何かが足りなかった。
確かにケルジは枠外シュートの山を築いたのだけれど、前を向いてシュートを打ち続けたのだから、私は全然非難する気にはなれない。
敢えて具体的な人名は出さないが、あの選手とかあの選手とか、あそこでもう少し頑張ってくれていたらな!という思いはすごくしている。
が、ケルジを責める気にはなれない。
彼は立派だった。
(ああ、いつものように大甘評価かしら??)

まあ、しかし、世間では、「シュートを外す」という意味で「ケルジする」という言葉が流布しつつあるようなのだ。

英語でKerzhakoved<Kerzhakov、ロシア語ではкержанул<кержануть(完了体)となる。
(不完了体ならкержаватьか?)
あるいはдать кержаковというのもあるようだ。
「クリスチアノ・ロナウドがシュートを外した」「ブルーノ・アルベスがPKを外した」みたいに使う。

"Кержануть": новое слово в английском языке

ケルジにとって辛いシーズンの幕開けになりそうだ。
それでも乗り越えるとは思うが。


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