2013年10月5日土曜日

チェコっと映画ポスター


 
今度はチェコと来たかー、と正直思った。
そして、そう思った人は私だけではないだろうことも想像できた。
チェコ文化と言えばこの人という知る人ぞ知る存在、ペトル・ホリーさんがNFCニューズレター最新号の巻頭記事の冒頭に、まさにそのことを、「映画ポスターと言えば、日本ではまず多くの方がポーランドにおける映画ポスターのことを思い浮かべるであろう。」と書かれているが。

現代の映画・演劇ポスターの前衛というと、やはりポーランド。
かつて六本木のストライプ美術館でポーランド・ポスターの展覧会があり(しかも確か無料)、度肝を抜かれたものだった。
地下ではワイダの映画がビデオ上映されていた。
右に「鉄の男」、左に「大理石の男」のポスターが貼ってある角にモニターがあって、その前で鑑賞していた男性に向かって、ポーランド人らしい若い女性が話しかけた。
「今やっているのは(右を指して)こっちですか、それとも(左を指して)こっちですか?」
(あの頃のワイダの映像って、どれも似通っていたりするでしょ?同じ役者が出ているし。)
そのときやっていたのは「大理石の男」の方だった。
しかし、ポスターってそういう場合、作品そのものを指し示すのだなあ、と実感した。

昨年馬車道でやっていた画期的なポーランド・ポスター展でも再確認したように、かつて東欧と呼ばれた地域でのポスター、特に映画や演劇のポスターは、日本(やアメリカなど?)で見慣れたそれとはかなり違ったものなのだ。

街中の掲示場所にこんな風に貼られていた・・・はずだ。

写真は1994年夏、カウナスで私が撮ったもの。劇団銅鑼の「センポ・スギハァラ」リトアニア公演のポスター。

前置きが長くなりつつある、いや既になっているが、ポーランドの映画ポスターは、


こんな感じ。
(詳しくは過去記事をご覧ください。)
 
 で、チェコである。
ホリーさんによれば、「我がチェコ共和国においても映画ポスター制作はポーランドのそれに劣ることなく、豊富に、しかも一流の芸術家、あるいはタイポグラフィーを専門とする作家たちによって制作され、今や世界各国の蒐集家達の羨望の的になっている。」だそうである。
 
というわけで、前置き終わり。
京橋のフィルムセンターに、「チェコの映画ポスター テリー・コレクションより」を観に行っていきました。
 
おお、チェコとポーランドの映画ポスターを比較対照した貴重でゆかしき本があったのか。
←3500円也。しかし完売。
やっぱりこれは思った展覧会はさっさと行かないとね。
 
 
ホリーさんが誇るように、チェコの映画ポスターも感動ものだった。
アートだけど、ポーランドのほどぶっとんではいなくて、タイポグラフィーで捻りを効かせているのがチェコ風、と言ったらいいだろうか。
 
第1章チェコスロヴァキア映画のポスター
 
おお、いきなり垂涎もの!
カレル・ゼマンの「悪魔の発明」「ほら男爵の冒険」。
あの宝箱を開いたような感覚が甦る。
リプチンスキーの「レモネード・ジョー」、ミロシュ・フォルマンの「ブロンドの恋」「火事だよ!カワイ子ちゃん」、懐かしい~!
映画は未見。原作大好き「美しい鹿の死」も唸らせる凄い出来。
やはり、作品自体に馴染があるものに惹かれるのだが、上述したように、ポーランドほどエグくはないが、センスの良さが随所に光り、そしてチェコの香りがなんども懐かしい。
 
第2章日本映画のポスター
 
日本映画はチェコ映画ほど観ていなくて、タイトルを知っているだけ、という作品が多いが、日本で作られたポスターとの対比が露わでおもしろい。
ポスター作者も、実際にその作品を観てから作る場合もあれば、作品を観ずにイメージで作っている場合もあって、ジャポニズム満開のものが多くはある。(渋いんです。)
「デルス・ウザーラ」はこのコーナーにありました。
 
第3章世界各国の映画のポスター
白ネコが可愛い!「フランス女性と恋愛」
タルコフスキーの「僕の村は戦場だった」はチェコっぽいデザインで大好き。
たぶん一番好き。
バラと、黒い大きな蛾が描かれていて、髑髏みたいな模様もみえ、ほのぼのと不気味が同居している。
セルゲイ・ゲラシモフの「ジャーナリスト」(映画は未見)は割とポップな雰囲気。
イオセリアーニの出世作「落葉」のポスターは、デザインとしてはなかなかいい。数字の偽造部分もくすりとさせられる。
でもこの映画が好きな作品だけに、作品自体よりポスターの迫力は弱いと感じてしまう。
そこへ行くと、ワイダの「戦いのあとの風景」はイメージぴったりだ。
「アンドレイ・ルブリョフ」のポスターはちっとも正教会の雰囲気はないのだが、あの映画だなあと脳裏に浮かぶ。
 
 
ポーランド、チェコときたら、次はスロヴァキア・・・ではなくて(ごめん。クリスマス前になるとていぱーくで切手展をやっていたものだけどね。ていぱーく、移転したんだってね。残念。)ロシアです。
「ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム」のポスターが貼ってあったので、いよいよもうすぐだとわくわくしつつ、「オデッサ・コスモス」に5月に書いていた記事に写真を入れておきました。


神奈川県立近代美術館葉山館で、10月26日から!

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