2014年8月9日土曜日

平和と戦争 友好と敵意 イランと世界

平和(ミール)と友好(ドルジバ)は、ソ連のパイプラインの名前として教わった。
ロシア語を習う前から知っていたロシア語の単語。

急に知ったのだが、イラン平和と友好の映画祭があるというので、駆けつけた。
なんと無料!日本語字幕付き。監督や俳優などの挨拶あり。なんという豪華企画だ!
それにこのご時世である。
イラクのイスラム国、イスラエルのガザ攻撃、あいかわらずのシリア、ウクライナの東部地域への攻撃、アルメニアとアゼルバイジャンの不穏な動き等々ある中で、イランの存在感はいっそう増しているが、そんな中での「平和と友好の映画祭」である。
注目せずにはいられない。

残念なことに、世界各地で戦火が絶えない。
そんな中、イランはかつては悪の枢軸だのなんだのと難癖をつけられ、欧米から経済制裁を受け、ある時は熱い戦争も不可避かと言われていた。
日本にいる身としてはただおろおろするばかりだったが、「フットボール・アンダーカバー」(ドイツのドキュメンタリー)などを観ると、2007年前後イランの核査察や経済制裁に揺れていたころ、イランの人やその関係者にとっては身も細る思いの毎日だったろうことが察せられる。

「独りぼっち」は、ブシェール(ブーシェフル)が舞台、主人公は空想癖のあるちょっと太めの少年レンジャー(というのはニックネームのようで、カリムというのが本名?)、彼が魚の行商をしに行った先で知り合ったロシア人少年オレグが初めて彼の妄想をまともに聴いてくれた(通訳女性を介してだが)ことから、無二の親友になる。
(商売上の必要から「新鮮な魚」みたいなロシア語ならレンジャーも知っていて、行商車に書いていたりもするのだが、この南部には原発関係者以外にはロシア語話者がいるわけではないようで、通訳女性がいないと二人の会話は全くなりたたない。この通訳女性がキーパースン。)
オレグの父は建設中の原発の技術者、母は重い病で入院中、やはりかなり空想癖がある少年で、レンジャーとオレグは似た者同士で惹かれあうのだ。
が、周囲の目は冷たい。
年配の人たちにとってロシア人はイコールコミュニストであり無神論者であるので、レンジャーがロシア人と親しくなることで不信心になるのでは?共産党になるのでは?とこちらも妄想気味である。
「ロシア政府が値をつり上げて原発建設が暗礁に乗り上げた」
「国際査察のために作業中断」
「ロシアがいる限り爆撃はないだろう」
「ロシア人が荷物をまとめて引き揚げる」
と、ブシェールの原発をめぐる世界情勢に翻弄されながら、レンジャーとオレグの友情は残酷にも裂かれてしまう。
その後、レンジャーはある思いきった行動に出る(が、日ごろの妄想癖のおかげで家族は軽く流している)。クラスメイトも一致団結。
レンジャーは世界を救えるか???

何となく、ゆるいSF風でもあるが、現実のシビアさを感じさせるところも随所にあって、お子様と一緒に楽しめるコメディー映画というわけでもない。
イランの美少年たちも多数観に来ていて感動したが、彼らが楽しんでいたかどうかは微妙。途中で退出してしまっていたようだ。
子どもが出演するが、「イランの子ども映画=子ども向け映画」ではない。

美少年たち
この子たちはそうでもなかったが、盛大に泣き声を響かせている子たちもおはしました。

エッサン・アブディープール監督と通訳のショーレさん。
 
昨夜ツイッターで書きなぐった文章では誤解を呼ぶかもしれないので補足する。
この作品の出演者は全て素人で、ブシェール近辺で探した子たち人たち(南部の訛りありとのこと。監督自身がこの地方の出身)、ロシア語話者についてはアルメニアで探した子たち人たち。
イラン国内在住のアルメニア人ではないです。
それと、通訳女性オリガが話をするイラン側の男性(船長?)が「母がリトアニア人でロシア語OK」というおもしろい設定。
この映画では、原発の是非は問題になっていない。とりあえずイランが「原子力を平和利用」することの是非も問うてはいない。(私自身、日本における原発再開には賛成しかねるが、イランのそれに関しては未だ態度保留だ。)
しかし、お魚がアップになる度に、「原発事故があって漁業が駄目になったらこの人たちどうなるのだろう?」とどきどきしてしまった。
国境警備らしい兵士たちは例のごとくもさっとしていて、普段は田舎で牛を飼っているんだろうなあというお兄さんたちだ。
彼らに平和と幸を授けたまえ。
イランは世界を救えるか?


「夜行バス」の監督、イラン映画重鎮キューマルス・プールアハマド監督。
「夜行バス」については後ほど。
こちらも傑作!!!
ああ、ペルシャ語やりたくなってきた!

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